このページを訪れた方は、さまざまな事情で監査業務に対応する公認会計士や監査法人をお探しであると推察いたします。 しかし、会社の事業規模や取引の複雑性、業種によって、誰に監査を依頼するのかはかわってくるものです。ここでは、監査人を選任する際の留意点について、記載しています。

私どもは、さまざまな外資系企業の監査に携わっております。具体的には、以下のような状況で監査が必要になる会社様が多いようです。

1. 監査を求められるのはどんなケース?

(1) 親会社が海外上場企業

親会社が海外で上場しており、Annual Reportなどを開示しなければならないケース。 日本の連結子会社も、親会社の決算にあわせて財務報告を求められ、その報告数値について公認会計士による監査を求められる。

(2) 海外企業と日本企業の合弁会社

日本企業と海外企業がそれぞれ50%出資して設立されるケース。 監査が義務付けられていないこともあり、日本企業は監査を受けることに消極的であったものの、海外企業の株主が、監査を強く要求してきたため、仕方なく検討することもある.

(3) 連結財務諸表作成のため

海外親会社は非上場であるが、年1回連結財務諸表を作成しており、監査が義務付けられるケース。
日本の子会社も金額的な重要性が高いことから、子会社の予算で監査を受けることを指示されることがある。

(4) 牽制機能の一環

親会社が各国子会社に内部監査人を毎年派遣するなど、ガバナンス意識が高いケース。 子会社の財務報告に関しても、第三者の客観的な保証がない数値は信頼性の低いものとみなされ、公認会計士によるレビュー手続などが求められる。

2.会計監査が求められない子会社もあるのか?

とはいえ、すべての連結子会社や持分法適用会社に、公認会計士による外部監査が求められるわけではありません。
一般に監査を求められるのは、財務的重要性が高い重要な子会社のみです。重要性にとぼしい会社については、必ずしも監査を実施する必要はありません。

では、子会社の重要性というものはどのように決定されるのでしょうか?
一般的には、以下の財務指標が、連結子会社の重要性の基準とされていることが多いと言われています(金額的重要性)

・当期純利益
・売上高
・総資産
・利益剰余金

上記のいずれかについて、子会社の財務指標が連結グループ全体の10%を超える場合には、外部監査手続を求められることが多いと思われます。

また、質的な重要性が高いことから、子会社が監査対象として認識されるケースもあります(質的重要性)。具体的には、日本の連結子会社で、多額の不動産や証券投資などの非経常的な取引が行われているケースや、見積要素をふくむ勘定科目(引当金など)の金額が多いケースが該当します。

3.リファードワーク(Referred Work)とは

親会社監査人からの指示に基づき、連結子会社や持分法適用会社の監査を別の会計士が実施することをリファード・ワーク(Referred Work)といいます。
海外親会社からリファー(言及)されて、日本の公認会計士が実施する外資系企業の監査は、 リファード・ワーク になります。
なぜ、親会社の監査人が直接監査を実施しないかというと、日本の子会社で行われている取引の証憑や伝票などは、日本語で書かれているため、外国人が監査を実施しようとしても、効率的に進めることができないためです。

子会社の規模が、連結グループの売上高や総資産規模に鑑みて、相当程度を占める連結子会社であれば、親会社監査人と同じグループ法人によって、リファード・ワークが行われることが通常ですが、日本法人の規模が小さい場合、他の中小監査法人や個人の公認会計士に業務を委託することはめずらしくありません。

4.なぜ、外資系企業の監査報酬は高いのか?

比較的規模の小さい連結子会社であっても、監査報酬は安い金額ではありません。外資系企業の報酬が高くなる理由として、以下のような理由があります。

・海外の会計基準が適用される

海外親会社は、国際財務報告基準や米国会計基準を適用しているため、日本の子会社もこれに基づいた決算を行う必要があります。しかし、日本の基準と国際的な基準との間には、まだまだ差異が多く存在するため、調整作業などが必要になります。こういった手続に工数がかかるため、監査報酬は高くなる傾向があります。

・英語に堪能な公認会計士が少ない

海外監査人から指示や、親会社へのレポーティングは全て英語で行われます。英語で高いクオリティーで監査業務に対応できる日本の公認会計士は、まだまだ少数であり、チャージレートが高くなることが多いようです。

・監査法人により実施される監査は、組織的な審査基準が適用される

大手監査法人では、成果物を外部に提出する際、何重にもわたるチェックが行われます。具体的には、監査チームが作成したレポートを、責任者であるパートナーがレビューした後、品質管理の担当パートナーがレビューします。パートナーのチャージレートは高額であるため、トータルの報酬も必然的に高くなります。

5.誰に監査を依頼すべきなのか?

・監査をするのは個人の会計士でも問題はない

相対的に重要性が低い子会社の場合、親会社の監査人との間で、頻繁にコミュニケーションを行うことはありません。情報交換はメールで行われるのが通常で、テレビ会議などもそれほど多く行われません。このような会社の場合、コストの高い大手監査法人を指名する必要性は必ずしもありません。親会社側からしても、特に問題とされないことが一般的です。

また、同じグループ法人であっても、個人会計士であっても、親会社の監査人から見れば、赤の他人であるため、求められる監査手続に変わりはありません。インストラクションに従って行われる監査手続は定型的なものであり、英語に通じた個人の会計士が実施すれば、クオリティーに差異が生じることもありません。むしろ、少人数で効率的に手続が実施されるため、工数も少なくなり、子会社からすれば、コスト面でもメリットを享受できるはずです。

・監査法人のデメリット

連結子会社の規模が小さい場合、大手法人に監査を依頼しても、経験豊富なスタッフは大企業に配属され、経験の浅いスタッフがアサインされることはめずらしくありません。高い報酬を請求される割には、対応が良くないこともありえます。このようなことに鑑みると、むしろ、中小の監査事務所や個人の公認会計士に依頼することを積極的に検討すべきです。

6.最後に

損益規模・資産規模が比較的小さい連結子会社では、大手監査法人ではなく、個人の会計事務所に監査業務を依頼することで、コストの面でも手続の面でも大いにメリットを享受することができると考えられます。財務経理の経験が長い方はおわかりかとは思いますが、大手監査法人に監査業務を依頼したとしても、最後にそのサービスに満足したかどうかは、担当者のパーソナリティによることが大きいと思われます。決して、監査法人のブランドによるものではないのです。

外資系企業である御社が、連結グループの観点からどの程度の存在感を持っているのか考えたうえで、リファードワークを誰に依頼するべきなのか、この記事が一助となれば幸いです。

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